獣医師が解説 犬のIBD(炎症性腸疾患)

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症例紹介 犬の椎間板ヘルニアと再生医療による治療例

犬の椎間板ヘルニアと再生医療による治療例

症例のポイント

1. 腰の椎間板ヘルニア(グレード5)により、後肢に重度の麻痺が生じてしまった。
(椎間板ヘルニアのグレードについてはこちらをご覧ください)
2. 外科手術を行なったが、あまり改善はみられなかった。
3. その後内科治療を行なったが、後肢の麻痺は残ったままだった。
4. 細胞治療実施後には数歩であれば自力での歩行も可能になるまで回復した。

椎間板ヘルニアとは

背骨の骨と骨の間に存在する椎間板という物質が、骨と骨の間からはみ出してしまうことで脊髄(背骨の中を通っている中枢神経)を圧迫・障害し、さまざまな神経症状をひきおこしてしまう病気です。
椎間板ヘルニアの詳細についてはこちらをご覧ください。

患者様について

患者様は、椎間板ヘルニアのグレード5(後肢が動かず、自分の意志で排尿もできず、強くつねっても痛みを全く感じなくなった状態)と診断されたボロニーズのワンちゃんです。
他院にて診断後すぐに外科手術を行ったもののあまり改善が見られず、その後半年にわたって抗炎症薬による内科治療を行っていましたが、後肢の麻痺は残ったままでした。

当院受診時の歩行の様子

下の写真は、左側が手術前、右側が手術後(その後当院に来院)、における脊椎横断像のMRI画像になります。
左側の写真では、椎間板ヘルニアによる圧迫病変が認められ、右側の写真では組織が壊死、瘢痕化(白色領域)していることがわかります。

幹部のMRI画像

壊死した神経は基本的には再生されることがないため、既存治療ではこれ以上の回復は難しいと判断し、再生医療による神経機能の改善を目指して当院を受診されました。

当院での治療について

再生医療による椎間板ヘルニアの細胞治療には大きく分けて二通りの方法があります。
① 間葉系幹細胞を点滴として投与する方法
② 間葉系幹細胞を障害を受けた脊髄に直接移植する方法

①は一般的に行われる静脈点滴と同じ方法で間葉系幹細胞を投与できるため、麻酔をかける必要がなく動物への負担も小さいリスクの少ない方法です。

②は間葉系幹細胞を移植するために麻酔をかける必要があるので、投与には麻酔のリスクが伴いますが、目的とする場所により高濃度な間葉系幹細胞を投与することができるため、より高い治療効果を期待することができます。

本症例ではまず①の方法を用いて、間葉系幹細胞を1週間ごとに連続3回静脈内投与しました。

橈側皮静脈MSC投与後の一ケ月後の様子

投与前と比較して、まだ後肢の麻痺は残るものの、歩行時の腰の位置が高くなっていることがわかります。後ろ足を触診した際、踏ん張る力が強くなった印象があります。

再生医療の効果は確実にみられているものの、車イスなしでの自力歩行はまだ難しい状態といえます。

今回は症例も5歳とまだ若く、症状が改善する可能性があるのであれば積極的に治療を試してみたいとの飼い主様のご意向で、②の麻酔下での間葉系幹細胞移植にもチャレンジしました。

<②の麻酔下での間葉系幹細胞移植後の動画は現在準備中です>

その結果、両後肢の随意運動がしっかりと確認でき、数歩であれば4足での自力歩行が可能になりました。

まとめ

一般的に、犬の椎間板ヘルニア神経学的グレード5はすぐに外科手術を行ったとしても、歩けるまで回復するのは約50%と言われており、半数のワンちゃんが歩行不可能な状態を余儀なくされているのが実情です。

本症例では、椎間板ヘルニアグレード5と診断され、外科手術を経ても歩行が改善出来なかったワンちゃんが、再生医療によって、部分的にではありますが、自分の足で再び歩くことができるようになりました。

当院における椎間板ヘルニアの再生医療

現在、当院では獣医学的・科学的根拠に基づいた再生医療を提供するとともに、より多くの椎間板ヘルニアの動物達が再び自分の足で歩くことができるように、さらなる再生療法の確立を目指して日々治療にあたっています。

当院での再生医療・細胞治療の詳しいご説明はこちらをご覧ください。

椎間板ヘルニアについてお悩みの飼い主さまがいらっしゃいましたら、当院までお電話いただくか、お問い合わせフォームよりご連絡下さい。

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